論説:ウクライナをめぐる危機 平和的解決の可能性はあるのか? The crisis around Ukraine: Is there a chance for a peaceful settlement? By Sergey Biryukov Global Times Jan 27, 2022 翻訳:池田こみち(環境総合研究所顧問) 独立系メディア E-wave Tokyo 2022年2月1日 |
2022年1月21日、スイスのジュネーブで、会談前に握手するアントニー・ブリン ケン米国務長官(左)とロシアのセルゲイ・ラブロフ外相。写真 AFP 著者 セルゲイ・ビリュコフは、ロシアのノボシビルスクにあるシベリア経営大学の教授である。 本文 このところ、ウクライナをめぐる危機的状況のエスカレートが勢いを増している。通信社によると、米国は以前国防総省が述べたように、必要であれば短期間に最大8500人の軍人を欧州に移送する用意があるという。 NATOは月曜日、東ヨーロッパ:ブルガリア、ルーマニア、リトアニアへの艦船と航空機の移送を発表した。スペイン、オランダ、デンマークは、東欧に追加部隊を派遣する用意があることを発表した。 月曜日の朝、米国、そして英国、オーストラリア、ドイツが、ウクライナから一部の外交官とその家族の避難を開始したことが明らかになった。これは、「ロシアからの脅威が高まっている」ことが理由と説明されている。日本政府も大使館員を含む国民を避難させる可能性を検討している。 ドンバスは再び複雑な状況となることがはっきりしてきた。自称ドネツク人民共和国の人民民兵部副部長エドゥアルド・バズリン氏は、ドンバスで対峙するウクライナ軍が攻勢に出る準備をしていると述べた。 同時に、欧米当局者はワシントン・ポスト紙に、「ロシア西部地域での装備や軍人の異常な動き」について語った。クレムリンは、国内におけるロシア軍の動きは、もっぱらロシアの問題であると述べた。 ドミトリー・ペスコフ大統領報道官は、「ウクライナは自国の問題を力づくで解決するために、別の試みを始めようとしている可能性が高い。」とし、「海外から軍隊を連れてきた人たちは、異常な軍事活動について話している。」と述べた。 しかし、ロシアと西側諸国との関係の悪化は、両者の交渉プロセスを止めることはなかった。ロシアは、米国やNATOと安全保障に関する交渉を行っている。その中で、ウクライナ周辺情勢の収拾が主な議題となっている。交渉は、さまざまなレベルで、対面でも電話でも行われている。 現在のウクライナ情勢は、西側諸国による複雑なポジション・ゲームの結果であり、ロシアはそれに参加せざるを得ず、新たな外部課題に対して独自の対応を整えているという状況である。欧米はしばしばロシアを地政学的修正主義で非難するが、同時にその理由を説明しない。 例えば、そのような「修正主義」はいつから始まったのか。ソ連が崩壊した後、20年前の2014年からか?NATOは、モスクワの再三の訴えにもかかわらず、モスクワの安全保障についてロシアと話し合うことを拒否している--これが、対立をさらに悪化させるおそれのある緊張した宙ぶらりんな状況を作り出しているのだ。NATOの幹部は、非常に緊迫した状況が続くことになる政治的発言を定期的に行っている。 つまり、合理的な政策の現れとは見なされない一連の即興的な行動を続けているのである。一方、ウクライナは、その政治的指導者に代表されるように、危機を経験した結果、政治的主体性のかなりの部分を失い、西側に一方的に賭けたために、バランスのとれた非対立の政治を行うことができない国家として顕在化したのである。 ロシアによるウクライナへの攻撃が迫っているというテーゼは、欧米諸国の政治・プロパガンダの構図であり、欧米諸国への忠誠心を示すために、ウクライナ当局が積極的に支持するものである。ロシアは、ウクライナ領内での軍事作戦や西側諸国との直接的な軍事対決には関心がない。しかし、ドンバス領内での人道的大惨事は許せない。これは、ウクライナ軍が(NATO諸国の軍事技術支援を得て)未承認の2共和国に対する軍事活動を強化した結果、必然的に生じることになるものである。 ロシアは基本的に、ウクライナ周辺情勢の相互作用と非エスカレーションの原則について西側と交渉する用意がある。しかし、ポストソビエト空間におけるNATOの拡大の拒否、ウクライナとグルジアの中立状態の維持、これらの国の領土における北大西洋圏の国々の軍事プレゼンスの不許可などの基本要件から逸脱することはできない。問題は、西側諸国とNATOが合意する用意があるかどうかである。 同時にロシアは、西側諸国の一方的な行動や決定に対しては、かなり厳しい行動をとる用意があることを示したが、この厳しさは反対側の行動と厳密に比例することになる。 今回のウクライナ、ドンバスをめぐる危機は、国家間の相互信頼が弱まり、国際機関の弱体化が進行する中で、世界がいかに脆弱になっているかを改めて示したものである。同時に、EU諸国の指導者の立場や、中国をはじめとする多くの国の代表が外交政策において対決的なスタイルを拒否していることは、現在の状況の繁栄と平和的解決への希望を維持することを可能にしているのである。 |